#01 仲井戸麗市さん_PAGE 4 of Soul Relations

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「快感なんか、とんでもない!(笑)」

──それと、ぼくは30代くらいから強烈に思いはじめたんですが、人との出会いというのは、本当に大きいなと。

「本当だね」

──そこに理屈というか、理由はつけにくいですよね。もちろん「その場所に行って誰かに紹介されたから」という理由はあるにせよ。

「そうだよね。それが偶然なのか、"偶然という必然" があるのかね。本当にそうだよね」

──出会いというのは、言葉になりにくい、魂の共鳴のような、そういう部分でつながっていくんでしょうねぇ。

「そうだね。そういう出会いがいくつもあるわけじゃないしね。本当に、"いくつか" だろうからね。そこにある種、決定的ななにか……」

──でも、そのわりにはデビューが、「プロになるぞっ!」って思っていらっしゃらないわりには、デビューが早かったですよね。

「そうですね(笑)。だからワケわかってないから、大人の人がやってきて、"レコードを出すぞ" と言われて、あれよあれよという間にというか、本当にワケわからないまま、というようなことなんだろうね。たぶんね(笑)」

──少なくとも、それに近い感じだった。

「うん。で、いまの子たちみたいにしっかりしていたら、"いや、俺たちはデビューするには力が足りないから" みたないことを言えたんだろうけど、そういうことすらもわかっていなかったから。レコード会社を受けては落ち、受けては落ちしているうちに、あるレコード会社に拾われた、みたいなことだろうねぇ」

──でもレコード会社を受けるということは、プロになりたい気持ちはあったわけですよね。

「うん。ただ、職業としてやっていきたいというような展望ではなくて、単純に、どうせやるならレコードをつくりたいわけじゃない? その程度の意識で "レコードをつくりたいね" という、無邪気なバンド小僧だったんだよね。本当に無邪気な発想で、"レコード会社を受けてみようか" って」

──差し支えなければ教えていただきたいのですが、デビューされたときは、まだアマチュアのときのストックでできますよね。

「うん」

──ところがメーカーとの契約のこともあって、レコードの枚数を重ねていくと次第に楽曲をつくる意識が変化してきませんでしたか。

「そういう話はとてもよく聞くし、現実にとてもよくある話だよねぇ。だけども、そういうことで追い込まれた記憶は、俺はあんまりない」

──はぁ~。

「そういった苦労はあんまりなくて、そういった意味では、いま思えば、むしろいい感じでやらせてもらっていたような、ことなんじゃないかな。あんまり "契約だからつくりなさい" ということはなかった。そういう話はよく聞くけどね。現実にあることだけど、そういうことで追い込まれたことはあんまりないなぁ」

──そうしたら角度を変えて同じ質問をします。

「うん」

──つくろうと思っていても、メロディーが出てこない、詞が出てこない。みたいにことも、そんなにありませんでしたか。

「それはしょっちゅう」

──あっ。それはしょっちゅうなんですね(笑)。

「しょっちゅう、ある(笑)。それはソングライターの端くれでいたい自分からすると、曲づくりというのはのたうち回る、というかね。それは簡単に書けない。それは日々追い込まれているけど。厳密に言えばさっきの話、"そろそろ新しい曲をつくらなきゃ駄目だよねぇ" っていう、スタッフとの話の中では、そういう追い込まれ方はある。
 曲づくりに関しては、毎日追い込まれているようなものかも知れない。"なんで出来ないんだ"、"つくらなきゃ"、みたいなことは、個人のなかではある。それは自分のことだからよくわかっているから、それが出来ないとはじまらないスタイルの、俺はミュージシャンだから、そこは常に……、すべての基準はそこかな。行動のすべてが。朝起きてから夜寝るまでのあいだ、なにを見てもなにを聞いても、誰に会っても誰と話をしていても、すべての基準はそこにある。"それがいやならやめなさい" ということだよね。だからその部分の葛藤は、毎日あるよね」

──でもそれが、実は快感になっていたりしてないですか。

「とんでもない」

──ないんですね(笑)。

「快感なんか、とんでもない!(笑)」

──苦痛?(笑)。

「苦痛! 苦痛!(笑)。だけど、イヤならやめればいいわけだし。まぁ、なかには "曲づくりは楽しまなきゃ" って人がいるかもしれないけど、それでも快感にはならないね(笑)。
 曲が出来たときは快感だよ。嬉しいし。でも曲をつくるということは、鶴が自分の羽をむしっているのと同じことだからね。苦しいよね。簡単にできないわけだから。"もうむしる羽がないよ" みたいなことなわけですよ」

「キヨシローくんがいなくなったという実感が、もてないんですよね」

仲井戸CHABO”麗市LIVE2009「I STAND ALONE」
008.jpg──それでは最後に、2009年10月におこなわれた、渋谷AXでのライヴの話を聞かせてください。

「はい」

──そのライヴの模様が、2010年1月にCDとDVDの形でリリースされました。ある意味、非常にショッキングな内容でもありました。いろんな思いがあったと思うのですが、あのライヴをCDとDVDにして、記録に残されましたね。


「はい」

──その気持ちは……、「記録に残そう」という気持ちはありました?

「最初は、極端なことを言うと残すのは嫌で、……でも、うちのスタッフといろいろ相談して……。
 あのライヴは、"その場限りにしたい" という気持ちがとてもあって。……そこにはいろんな理由があるんだけど、あの夜、あの場所に来てくれた人に向かって、"RCサクセション時代の曲を俺がひとりでやる" ということでいいと思ったんですよね。もっと言えば、限定したかった。そうしたかったんだけど、ライヴが終わって、基本的にはうちの社長が、"あのライヴを記録に残したらどうですか" って。それから、ずいぶん話し合ってね。そうしているうちにある種の意志が生まれて、"残してもいいんじゃないかな" という気持ちから、"残したほうがいいんじゃないかな"、そして結果的には、"残すべきだ" になったんです。
 そこにはいろんな要素があるんだけど、結果的には記録に残させてもらって、いまは、そうしてよかったと思ってます。複雑な心境はありつつ、いまは残せてよかったと思ってます。ただ、そこに行き着く過程は、なかなか難しかったです」

──それでは、あのライヴのCDでもDVDでも、出来上がったものを見たり聴いたりされた、チャボさんの感想を教えてください。

「えっとねぇ……、いろんなタッチの感想があるんですけど、一番の感想は、やっぱり彼が……、キヨシローくんがいなくなったという実感が、もてないんですよね。友人として。そのことがどうしても、気持ちとして行ったり来たりしてしまう。
 現実だから "受け入れろ" という気持ちもあるんだけど、渋谷AXで自分がやったことをもう一度映像で見て、"お前、なんのライヴをやったんだよ" っていうね。"チャボ。なんのライヴをやってるの?"。"……ぁっ、そうか。俺はキヨシローがいなくなったことでライヴをやったんだ" って。そういう気持ちの……、行ったり来たりが……。あのときの映像を見て、そのことをもっと突きつけられた。"だけど、お前は生きているんじゃねぇかよ"。みたいな、そういう感情的なことがひとつと、もうひとつは、"RCの曲、ちゃんと唄えているのかな" って。
 それはまた違う角度ね。"でも、なんとかやったかな" とか。"キヨシローくんはこれでいいと思っているかな"。 "キヨシローくんは笑っているかな"。そういう、プレイヤー、シンガーとしての自分の想いね。そういう複雑な……、"どうだったのかな"、"なんとかできたのかな"、 "キヨシローに届いたのかな"。 "ああいうライヴをやった意味は、どこにあったのかな"。それと……、残された家族がいるからね。そのことの、キヨシローの無念さと。それから、友人として、彼の大事な家族への、自分の距離としての想いとかね。
 そういうことを、いろいろ考えてしまうんだよね。そういうことの、いろいろな想いが浮かんでくるよね」

──あのライヴをやろうと決意されたときも、相当きつかったですよね。

「うん。それも迷ったんですよ。そういうライヴを、はたしてやるべきかどうか。そのときもいろいろ考えた末に、"やろう"。"やるべきだ" と、葛藤があったよね。そこはまぁ、自分なりに結論が出たから、いまはやってよかったと思っているんですけど。だけどなかなかねぇ……。ああいうライヴをやるとは思ってないわけだから」

──そうですよね。ただぼくは個人的に、記録に残していただいて、よかったと思っています。

「ああ、ほんと?」

──ええ。

「それはとても嬉しいね。そういうことを言ってもらえると、残してよかったと思えるね」

──……、……。

「ただ、友人としての距離のキヨシローくんと、俺は自分の職業としてのプレイヤーとしてのなかで……、揺れ動くところがあるんだよね。なにか、……こんなことは話さなくてもいいのかも知れないけど、プレイヤーとしてはステージに立って、"やりました!" みたいな部分もあるんだろうけど、素になってみると、友だちとしてのあいつがいなくなったことによる、自分の居場所のなさ。そういうことのなんか、……複雑な。でもさ、ああいう形で残したことをそういうふうに言ってもらえると、よかったと、そう思いたい」

──……、……。

「……俺の奥さんが、たまたま写真で彼をたくさん撮影しているんだけど、ず~っと彼がそばにいるんだよね。あれから、仕事でず~っと。キヨシローが、たくさんいるわけよ。俺の家に」

──……なるほど。

「それ、すごいよね。奥さんと二人で、"俺たち、なにやってんのかな" って。 "なんでキヨシローの写真を、家の中でこんなに選んでいるんたよ" とかね。……そういうことに、戻っちゃってんだよね。果ては、"俺はなんでキヨシローの歌を唄ってんだよ" ってところまで」

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