
大澤誉志幸さん ロングインタビュー
「”ファンのためにも音楽をつくり続けよう” という気持ちに」
──1990年代の後半に一度、アーティスト、大澤誉志幸をやめる、というところに行き着くんですが、そこに行く過程というのは、どういう流れだったんですか。
「やるべきことは、自分の中で大体できちゃったかな、というか。表現の手段が少し見えにくくなってきたんです。……20代や30代のピークってあるじゃないですか。ビートルズもそうだったし。30年、40年以上続けている人はスタイルを変えているし。声のレンジの幅も、ジョン・レノンだってキーが変わったし。そこらへんで、自分が年齢を重ねていくなかで、今後どういう表現がいいのかナイーブになり、袋小路に入って、”どうしよう” という感じでしたね。そうするとちょっとナーバスになってしまったから、一度、裏方にまわって仕事をして、もう一度やれるチャンスがあれば、そのときにやろうと思ったんですね」
──そのときは、「もうソロでできないかな」と思っていらっしゃいました?
「半分くらいは思っていましたね。そのときはすでに40の声を聞いていたので、”裏方に徹したほうがいいのかな” って思っていました。それでそこから2年半はプロデュース・ワークと作曲の仕事っていう感じでしたね」
──人をプロデュースするという面白味は、どういうところにありますか。
「変身願望みたいなものですね」
──変身願望。
「そうです。たとえば女の子をプロデュースするときは、”こういう女の子になってほしい” とか、”この子はこういう歌を唄ったらいいんじゃないか” とか、思い込みですよね。それと、レコード会社の思惑というか。そのあたりの意識をすり合わせして」
──そして、一度アーティストをやめられて裏方にまわられたあと、2000年の初頭に復活されたわけですが、そのタイミングはいかがでしたか。
「その当時は、個人的にボサノヴァとかブラジルの音楽をずっと聴いていたので、”こういう表現はいいな” と思って。それなら低予算でつくれるかなと思ったんです。その頃は、メジャーとインディーズの壁がたまたまなくなってきた時期でもあったので、そういうやり方を徐々にはじめていったんですね。まぁ時代はもっと巡って、YouTubeとかが出てくると、もっと大変な時代になっちゃっうわけですが(笑)」
──そのとき、久しぶりにステージに立たれた感覚は、どんなものがありました?
「やっぱり、”ファンの人はちゃんと待っていてくれたんだな” って。そう感じて、考え方がちょっと変わりましたね。ずっとぼくの音楽を聴いてくれていたのに、ぼくがやめてしまうと、その人たちの行き場がなくなるというか。だから、”ファンのためにも音楽をつくり続けよう” という気持ちになりましたね」
「バラードは神経を集中させるから一番疲れるんですが(笑)」
──昨年、ベストアルバムをリリースされました。それが全32曲という、ものすごいボリュームのアルバムでしたが、非常にいい流れで網羅されているなという印象でした。ちゃんと2000年代の楽曲も収録されていますし。
「そうですね。自由にやらせてもらったので、そこら辺がやっていて楽しかったですね。その楽しさが聴く人に伝われば嬉しいです」
──そして今回は、デビュー30周年の記念碑的なアルバムになりますが、どのような内容になりますか。
「5曲が新曲で、『そしてぼくは途方に暮れる』とか『クロール』とか、わかりやすい曲を5曲入れたベスト的な内容になっています」
──半分が新曲で半分はベストだと、曲順は難しかったんじゃないですか。
「難しかったですねぇ。バリエーションが豊富な分だけ、ね。基本的には生っぽい感じが7割くらいで、3割は打ち込みメインなんです。全体的にはポップな感じに仕上がったと思います。あんまりロックっていう感じではないですね。
今回のアルバムはデビュー30周年ということで集大成的な位置づけになると思うんですが、特に新曲はジャズとかボサノヴァとか、ラウンジ・ミュージックぽい曲も入っているし。それに、ちょっと得意としているバラードも入っているので、いま現在の、30周年を迎えた大澤誉志幸なりの集大成かなと思います」
──ぼくも大澤さんの曲はバラードがとても印象に残っています。
「そうですね。バラードは神経を集中させるから一番疲れるんですが(笑)。……勢いでいけちゃうほうが楽なんです。ヴォーカルだから、一語一語に集中するので、バラードが一番疲れます。だけど、それだけがんばるといい結果も出るから気に入っているんですが」
──ご自身の印象としては、80年代の声といまの声とは、どういうふうに解釈していらっしゃいますか。
「キーは変わってないんですよ」
──すごいですね。
「ちょっと高音がきつい程度で。ただやっぱり若い頃よりは、より繊細になったのかなぁとは思います。ニュアンスがうまく出せるようになったというか」
──いまの声質はご自身でお好きですか。
「そうですね。集中力がビシッとハマれば。ダラダラしていると、喉の筋肉が退化してしまうので。だから、喉を鍛える訓練をしているんですが、それをやっていないと退化してしまって駄目ですね。訓練をしているから、未だに若い頃のキーでいけてるんだと思います」
* * *
今回のアルバムには新曲の他、名曲「そして僕は途方に暮れる」や、「クロール」、「ゴーゴーヘブン」などのセルフ・カヴァーも収録されていて、その意味では馴染みやすいアルバムでもあったりする。大人の色気がどんなものか、知らない人にもお薦めのアルバムだ。
水月鏡花/Yoshiyuki Ohsawa 30th anniversally album
self cover&new songs
01. 虹が架かる前の空を見てる
~Another day in my life~
02. Nobody knows
03. 白昼夢
04. そして僕は途方に暮れる
05. 永遠の1/2
06. クロール
07. 晴れのちBLUE BOY
08. GIFT
09. それからの君は
10. ゴーゴーヘブン
11. 白昼夢 (REMIX)
CD-EXTRA付き /TECG-30047 3000円(税込)
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